東京右半分

著者:都築響一 下町情緒が色濃く残るエリアにスポットを当て、普段の東京案内ではなかなか触れられないディープな魅力に迫る一冊。アート、サブカルチャー、職人技など、さまざまな分野で独自の世界を築いている個性豊かな人々が登場します。彼らが放つ圧倒的なクリエイティブパワーは、街の風景をより鮮やかに、そして刺激的に映し出しています。 中でも注目すべきは、ラブドール業界の先駆者として知られるオリエント工業・土屋日出夫社長。彼の活動を通して見えてくるのは、単なるアダルトビジネスの枠を超えた、日本独自の「ものづくり」精神とサブカルチャーの深層です。右に曲がった視点で描かれるこの東京見聞録は、常識を揺さぶる発見と驚きに満ちた、まさに異色の都市案内となっています。

ラブドール 抱きしめたい!

プロデューサー:日下部圭子 この親密なラブドキュメンタリーは、東京の片隅にひっそりと佇む9体の精巧に作られたラブドールたちの“生活”を静かにたどっていきます。儚く、美しく、そして不気味なほどリアルな彼女たちは、周囲の人々が抱える感情の空白を、何も語らず見つめ続ける存在となります。 日下部圭子がプロデュースを手がけた『ラブドールを抱きしめたい』は、「モノ」と「主体」の境界を曖昧にしながら、愛情、孤独、そしてつながりを求める人間の本能に問いを投げかけます。静謐な映像と瞑想的なテンポによって描かれるのは、無機物さえもが人間の真実を映し出すという深い示唆。単なるラブドールの記録ではなく、無関心に満ちた都市の中でこぼれ落ちる“渇望”を描いた、詩的で心に響く作品です。

空気人形

監督:是枝裕和 『空気人形』は、世界的に高く評価される是枝裕和監督による、繊細で示唆に富んだ作品です。物語の主人公は、ある日突然「心」と「自我」に目覚めた空気でできたラブドール。人間の世界を歩き始めた彼女は、さまざまな人々との出会いを通じて、感情という新たな世界に触れていきます。 人形の無垢なまなざしを通して、本作は現代都市に生きる人々の孤独や断絶、そして誰にも言えない静かな渇望を静かに映し出します。かすかな官能性と遊び心を織り交ぜながら、『空気人形』は単なる幻想物語にとどまらず、「生きるとは」「愛されるとは」「人に囲まれていながら感じる空虚とは何か」といった根源的なテーマを優しく問いかけます。詩的な映像美と壊れそうなほどの儚さが余韻を残す、現代の寓話のような作品です。
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