1998年。
「華三姉妹」に新たな頭部パーツが加わり、
オリエント工業の製品は、さらに多彩な表情を見せるようになりました。
そしてこの時期は、製品そのものだけでなく、
販売方法や呼び方にも大きな変化が生まれた時代でした。
発売年
1998年(平成10年)
当時販売価格
240,000円
前回紹介した「華三姉妹」は、頭部を交換できるという新しい楽しみ方を 提案したシリーズでした。
1998年には、そこへ新たな頭部パーツが加わります。 「咲」「鈴」「春」「ローラ」などが追加され、 頭部パーツのラインナップは合計8種類へと広がりました。
一体のドールにひとつの顔を組み合わせるだけではなく、 「どの顔を選ぶか」という部分そのものが、 ユーザーにとって製品を選ぶ楽しみのひとつになっていきました。

「ウィンクEYE」から「グラスティックEYE」へ
この時期の大きな変化のひとつが、頭部の目の表現です。
それまでの製品では、ドールを横に寝かせると自然に目を閉じ、 起こすと目を開く「ウィンクEYE」が採用されていました。
それに対して新しいモデルでは、 ガラスのような透明感のある瞳を表現した 「グラスティックEYE」仕様の頭部パーツが登場しました。
目を閉じる仕組みから、瞳そのものの美しさへ
「グラスティックEYE」は、目の動きだけではなく、 瞳そのものの透明感や質感を意識した新しい表現でした。 顔の印象を大きく左右する「目」に新しいアプローチを取り入れたことは、 後のリアルな顔立ちを追求していく流れにもつながる重要な変化でした。
より自由になった頭部と首の可動
変化は目の表現だけではありません。 頭部の接続方式も見直され、マグネット方式のボールジョイントが採用されました。
これにより頭部の交換がより容易になり、 複数の頭部パーツを好みに応じて付け替えるという 「華三姉妹」から始まった選択性が、さらに扱いやすいものとなりました。
さらに首は左右に回転するだけでなく、 他の方向にも角度をつけられるように改良。 顔の向きや姿勢に変化をつけることで、 同じドールでもより豊かな表情を作れるようになりました。

腕や脚の接続部分も改良
頭部だけでなく、腕や脚の接続金具にも改良が加えられました。
製品を長く使用するための耐久性だけでなく、 パーツを扱う際の使いやすさにも目を向けることで、 日常的な取り扱いをより意識した設計へと進化していきました。
ネット販売の開始と、広がっていく選択肢
1998年頃からは、オリエント工業にとって ネット販売という新しい販売方法も始まりました。
それまでとは異なる形で製品情報に触れられるようになったことで、 遠方に住むユーザーにとっても、オリエント工業の製品を知る機会が 少しずつ広がっていきました。
頭部パーツのラインナップが増えたことと、 販売方法が広がったこと。 この二つの変化は、製品を「作る」だけでなく、 より多くの人に知ってもらい、選んでもらうという オリエント工業の新しい段階を象徴しています。
「鈴」の人気と「アリス」へのつながり
数ある頭部パーツの中でも、かわいらしい印象を持つ「鈴」は 特に人気を集めました。
翌年に発売される「アリス」と並び、 「鈴」はオリエント工業を代表する頭部パーツのひとつとして 広く知られるようになっていきます。
頭部パーツの選択肢が増えたことは、 単なるバリエーション追加ではありませんでした。
顔立ちによってドール全体から受ける印象は大きく変わります。 「自分はどの顔が好きなのか」を選べることは、 ユーザーがドールに自分の好みやイメージを重ねるための 新しい方法でもありました。
「キャンディガール」という新しい呼び方
そして、この時代には製品そのものとは別に、 もうひとつ大きな変化が起きています。
当時、一般的に使われていた「ダッチワイフ」という呼称と 製品を明確に区別するため、オリエント工業は 新しい呼び方をユーザーから募集しました。
その中から選ばれたのが、 「キャンディガール」 という名称です。
これは単なる商品名の変更ではありません。 製品をどのような言葉で呼ぶのかという部分まで、 ユーザーとともに考えようとした取り組みでした。
「ラブドール」という言葉が広がり始めた時代
さらに興味深いのが、この頃から一部のユーザーの間で 「ダッチワイフ」と区別するために、 「ラブドール」という言葉が使われ始めたことです。
当時はまだ現在ほど一般的な呼称ではありませんでした。 しかし、ユーザーの間で少しずつ使われるようになったこの言葉は、 その後、製品を表す呼称として広く浸透していくことになります。
1998年は、オリエント工業にとって 「製品が進化した年」であると同時に、「製品を取り巻く環境が変わり始めた年」 でもありました。
「グラスティックEYE」による瞳の表現、 マグネット方式ボールジョイントによる頭部交換の容易さ、 首の可動域の向上、腕や脚の接続部分の改良。
そこにネット販売の開始、 「キャンディガール」という新しい呼称、 そして「ラブドール」という言葉の広がりが重なります。
技術、販売方法、そして言葉。 それぞれの変化が重なった1998年は、 オリエント工業の歴史を振り返るうえで、 ひとつの大きな転換点だったといえるでしょう。










