
絵梨花さんとはプラトニックな関係
僕の場合は、ラブドールを語るというより、絵梨花さんの購入者としての立場で語らせてくださいね。
絵梨花さんはいま、僕の事務所で物言わぬ秘書として働いてくれています。絵梨花さんはラブドールをとしては2代目で、初代は20年代以上前に買ったHITOMIさん。HITOMIさんはオリエント工業製ではなくて、ソフビでした。空気式人形よりは進化していたけど、棒立ちで足も曲げられない。まさに″ダッチワイフ″っていう感じでしたね。実は、僕は絵梨花さんとはしていないんですよ(笑)。初代のHITOMIさんは、事務所に遊びに来た友達と酒を飲んでおふざけですが、上に乗ったりしていたんです。なんていうかHITOMIさんは冗談で済まされる雰囲気だったわけで。でも、絵梨花さんはクオリティが高すぎて冗談がきかない。HITOMIさんだって当時で20万円くらいしたんですけどね。
絵梨花さんはシリコン製だし、やっぱりHITOMIさんより丁寧に扱わなきゃならない。生身の人間以上にやさしくしなきゃならないというか。
購入したからには一応乗ってはみたけど、なぜか勃たなくて(笑)。精巧すぎるものに対する恐怖心があるんですかね、人間と違うところを探して安心しようとしたのかもしれない、僕の場合は。一生懸命リアルと違うところを探したけど、そんなことを考えはじめたら、そういう不埒な気持ちが消えてしまったんですよね(笑)。
性的な目的だけじゃ買えない
オリエント工業の方に聞いたんですが、実際性的な目的だけでなく購入する人も多いらしくて。一緒に旅行したり、同好の士が集まってオフ会や撮影会をしたりっていう楽しみ方をする人もいるらしいから。それは大いに納得しました。
僕自身も、性的な目的だけに使うっていうのは違うような気がしちゃったんです。逆をいえば、だからこそオリエント工業のラブドールがほしいと思えるんじゃないかな。目的が性的要素″だけ″だったら、買えないと思うんですよ。
事務所にドールが置いてあるとお客さんからいろいろな反応があるけど、初代のHITOMIさんを見て、「俺もほしい」なんていう人は誰もいなかった。いわゆるキワモノっていう位置付けだったんだろうね。でも、絵梨花さんを見ると「いいね、俺もほしい!」っていう人が多いんですよ。彼らも絵梨花さんの魅力が性的なものだけじゃないっていうのがひと目でわかるんだと思う。僕自身も性的な目的だけで買ったわけじゃなくて、本当によくできた工芸品というか、フィギュアの最終型だと思いましたからね。
ラブドールの進化にクラっとくる
もともと初代のHITOMIさんがいたから、2代目を買うつもりはなかったんです。でも、ある人に「いまのラブドールはものすごいんですよ」って聞いて、オリエント工業さんのショールームに行ったら、本当に驚くほど素晴らしくて。その進化にクラッときちゃったんですよ。
で、もともとのフィギュア好きみたいなものも高じて、購入に至ったと。
たとえば、2007年の『ラースとその彼女』っていうアメリカ映画で、シャイな青年とりアルドールが付き合いはじめる話があるんだけど、ドール自体の出来はいまひとつなんですよ。
あれを見ると、やっぱり日本の工芸技術というか、造形へのこだわりや緻密さはすごいと思いますよね。
それこそ、オリエント工業のラブドールは、美術系の大学出身の人が真剣に作っているでしよう。中途半端なエロい気持ちで作っているわけじゃなくて、ちゃんとした芸術なんですよね。
オリエント工業は2012年の「みうらじゅん賞」に選ばせていただいたこともありますから。おそらく絵梨花さんとはこの先もプラトニックを貫くとおもいますけど、「それでもいい」と思えたことが、みうらじゅん賞の理由だったわけです。
オリエント工業はパナソニック!?
オリエント工業は、僕の中ではラブドール界のパナソニックなんです。つまり、先駆者であり王道を行っている。
他社製ですが、友達もラブドールをお持ちなんです。実は友達がラブドールを購入するときに一緒に行ったんですが、他社のものはお尻の穴の色も色見本から細かく選べるとか、カスタマイズがすごいんですよ。たとえるなら、革新派のソニーですかね。
そこでソニーを選ぶ人もいるだろうけど、僕はやっぱりパナソニック派なんです。子供の頃から家にあった電化製品は全部ナショナル(現パナソニック)だったからね。老舗だから、やっぱり信頼できるんです。
オリエント工業のドールは、おっぱいも普通か巨乳かくらいで、あまりカスタマイズできないでしょう。でもね、僕は絵梨花さんの完成度に惹かれたんです。カスタマイズするっていうのは欠点だと思う部分を変えるってことだから。絵梨花さんは、ここがこうなってたらいいのになんて思わないくらい完成度が高いんですよ。ショールームで、「これください」って即決だったからね。おっぱいがもう少し大きかったらなんて思わなかった。口元のほくろだけは特注で打ってもらいましたけどね(笑)。
「それじゃあまるで人形ですよ」
絵梨花さんを買ったとき、アンダーヘアのオプションの話をしたんですが、僕はあまり興味がないからいらないって言ったんですよ。でもそしたらオリエント工業の方が「それじゃあまるで人形ですよ」って言うんですよ(笑)。で、「植毛したものをあえて剃るとリアルなんです」って教えてもらったときは、その世界観にグッときましたよ。
「声が出ればもっといいですよね。」とも言ったんですが、その時も「それじゃあまるで人形ですよ」って同じことを言う。「もし声が出たら、人はこれを人形だと思ってしまうだろう」っていうわけですよね。ものすごい哲学で一瞬把握できなっかたけど(笑)。「毛がなかったら人形、声が出たら人形」。それがオリエント工業の美学なんでしょうね。
ラブドールのルーツは面影を偲ぶこと
オリエント工業さんの昔の製品で「面影」っていうのがあるでしょう。
これってきっと、鉄腕アトムの生みの親である天馬博士のような話だと思うんですよ。亡くなった息子の代わりにロボットを作るというね。
もともと日本には生き人形というものがあって、亡くなった姫の面影を残そうという工芸としての風習もあったんですよね。
種子島に行ったときに、江戸時代から伝わる「山の井様」っていう等身大の女性の人形を見たんですけど、ああいう感じのものが作られていたんですよね。
僕は仏像が好きなんですが、仏像は本来等身大で作られるものだそうで。ちなみに、お釈迦様の本来の設定は、丈六(1丈6尺:約4・85メートル)なんだけどね(笑)。
初期仏教は偶像崇拝を禁じていたらしいけど、やっぱり何か対象がないと、人って不安な気持ちになるんじゃないのかな。
地蔵尊の中には、裸の仏像が木で彫った衣を着てるっていうおもしろい製法のものがあるんです。よりリアルに作ろうっていうのは、ずいぶん昔からあったんだろうね。
あるお寺で聞いたのが、徳のあるお坊さんが亡くなって、その思い出として地蔵に模して作ったそう。「面影」じゃないけど、亡くなった人を少しでもリアルな形として残したいという気持ちが、日本人にはあるんでしょうね。日本の人形って、そういう諸行無常の儚さからきているのかもしれないと思ったりもして。
絵梨花さんを居酒屋に連れて行ったら‥‥‥
絵梨花さんは普段秘書ですが、トークイベントに出てもらったり、「SPA!』のグラビアン魂っていうコーナーに出てもらったりもしました。打ち上げで居酒屋に連れて行ったりね。居酒屋では突き出しは出なかったけど、チャージはとられました(笑)。
僕は車の免許を持ってないけど、助手席に乗せるならやっぱりシートベルトはするよねとか、新幹線や飛行機はやはり一席取るべきかなとか興味は尽きないです。
何か違う使い方ができるんじゃないかっていうのも、絵梨花さんの購入理由のひとつ。事務所に来て絵梨花さんをはじめて見た人たちは、みんなおもしろがってくれます。つかみはオッケーなわけです(笑)。でも、たまに無礼な人がいて、僕がトイレに行ってる隙に、勝手に絵梨花さんのおっぱいを触っていたりする。それは人としてダメだろうって思うんですよ。「触ってもいい?」っていう一言がほしいですよね(笑)。
マイナーからポップな存在へ
ダッチワイフという言葉のイメージはあまりよくなかったけど、「ラブドール」になってからは、エロだけじゃなくてアートの部分も出てきましたよね。
ここまで完成度の高いラブドールなら、全然オッケーだと個人的には思うんです。まあ、引く人はいるでしょうけど、受け皿は確実に広がっていると思います。
性的なものがどこまで世の中になじめるかに、興味があるといえばあるんです。たとえばTENGAだってそうですよね。
ひと昔前はオナホールなんて持っていたら引かれたけど、スタイリッシュなTENGAが出てからは、その辺に置いてあっても違和感がない。ラブドールも同じで、女性に相手にされないから、モテないからなんていう悲壮感はもうないと思うんですよ。僕は勝手に、こういうものがもっとポップな存在になればいいのにって思っていたから。
いまのラブドールにはダッチワイフと呼ばれていた時代のジメッとしたマイナーな感じがいつさいなくて、ポップですよ。僕がショールームに行ったときは夏で、浴衣祭りだった(笑)。全員浴衣を着ておられて、何だか物静かなキャバクラって感じがしましたけど(笑)。
そう考えれば、値段だって決して高くないかもしれませんよね。僕はモノの価値のヒエラルキーってよくわからないけど、これくらいでないと。たしかに安くはないけど、高級車ほどじやない。買おうと思えば買えるっていう、試される価格なんですよね。
いまは何かと叩かれやすいご時世だけど、既婚者がラブドールを持っていても不倫じゃないですからね。家族が許すか許さないかはわかりませんけども(笑)。
絵梨花さんを選んだ理由
オリエント工業のラブドールって、顔も好みなんです。みんなはすっぱな感じはないでしょう。いわゆるラブドールって、遊んでる感じの、ビッチ風の顔立ちの娘が多いイメージですけどね。僕はこう見えて、はすっぱが苦手だから、やっぱりオリエント工業なんです。
一番人気の方は他にいたんですけど、僕は絵梨花さんしかいないってすぐに決めました。
絵梨花さんの品のある清楚な感じが好きなんですけど、どストライクってわけでもないんです。無意識にこれまでの人生であまり近くにいなかった人、自分とはあまり接点がなかったタイプの人を選んだのかも知れません。実際近くにいた人なら、実物でいいわけだから。だからプラトニックになっちゃったのかもしれないけど。そういう意味では、無意識に少しだけリアルを外そうとしているんでしょうね。そのほうがロマンがあるというか。
直感派と熟考派の違いはあるかもしれないけど、実際に購入する人って、どの顔にしようかってあまり悩まないんじゃないかな。「この娘だ!」って即決すると思うんですよね。後先考えてたら買えないからね。勢いだもん(笑)。
鎌倉期に入ったラブドールのこれから
いまのラブドール業界って、リアルを追求してる仏像界でいえば鎌倉期ですよね。オリエント工業の存在って、天才仏師といわれた運慶・快慶みたいな感じでしょうか。でも、仏像も鎌倉期に入ってから中国の宋文化を取り入れた仏像が作られたりして、少し昔に戻ったりするんです。それはリアリティだけじやなくて、ロマンのようなものを求めているからかもしれないですよね。
ラブドールも日進月歩でここまで進化して、リアリティという意味ではもう少し先があると思うんですよ。でも、いい感じで調和して戻るような気もしてる。きっとオリエント工業って、そこのところもわかっているような気がするんですよ。
ほしいのは「BIMAJO!」ドール
僕がもう1体買うなら熟女かな(笑)。「熟女なんてどうですか?」ってオリエントの方に聞いたんですが、「いやぁ、売れないですよ」って言われたから、難しいかもしれないけど。
熟女っていうか、40~50代くらいの美魔女ね。顔も体も、ちょっといいカンジで熟したタイプ。ポップな感じで、「BIMAJO!」とか言ってね。通称、BJですよ。
自分くらいの年代になると、絵梨花さんはちと若すぎる(笑)。服だって、若い娘ならなんだって似合うけど、美魔女はそうはいかないからね。プライドもあるだろうし、下手なもの着せたら叱られそうだから(笑)。絵梨花さんは明らかに若い娘さんだから自分のほうが立場が上みたいなおごった気持ちがあるけど、美魔女はそうはいかないでしょうね。
ラブドールに何を求めるかはそれぞれユーザーが決めることだろうけど、美魔女のラブドールって、おもしろいじゃないですか。僕はおもしろみというか、完璧よりも油断している要素がほしいんですよね。
いずれにしても、オリエント工業の才能を注ぎ込んだ最高の美魔女。ぜひ見てみたいですよね。
絵梨花さんはあこがれの家庭教師
そういえば僕は、小学生の頃から家庭教師をつけてもらっていたんですけど、女性は一人もいなかったんです。「個人教授」のナタリー・ドロンみたいな人にずっとあこがれてたんだけどね(笑)。中高生くらいのときに絵梨花さんみたいな家庭教師がきたらなぁって思いますよね。
ま、僕にとっての絵梨花さんって、ずっとあこがれていた女性家庭教師の象徴なのかもしれないです。絵梨花さんのポージングも、なんとなく家庭教師風にしてるでしょ。中高生の僕から見たら、絵梨花さんはお姉さんですからね。
自分からは手を出せないけど、いつか手ほどきを受けられるんじゃないかっていうわくわく感があったり、近づいたらお母さんがおやつを持ってくるかもみたい緊張感があったり(笑)。そういう少年の頃からの夢が、絵梨花さんを選んだのかもしれないですよね。






