
監督:緒方貴臣
『体温』は、人形に恋をする男性と、自分自身を取り戻そうと葛藤する女性との間に生まれる、切なくも異質な愛のかたちを描いた異色のラブストーリーです。緒方貴臣監督は、ミニマルな演出の中に深い感情のうねりを込め、孤独の痛みや、冷たく断絶された世界の中で求められる“ぬくもり”を繊細に描き出します。
静けさと官能性が交錯する映像世界は、触れることが癒やしや自己の回復を象徴する、どこか幻想的な感情空間へと観る者を誘います。男性の人形への献身と、女性の心の崩壊が交差する中で、この作品は「愛」や「親密さ」、そして「生きる実感」の境界を問い直します。極限状態にある二つの魂が、思いもよらぬ場所に安らぎを求める— そんな静かで深い余韻を残す、親密かつ衝撃的なポートレートです。







